おすすめの本

【おすすめの本】穂村弘さんの『ぼくの短歌ノート』は現代短歌の傑作ぞろい!

 

こんにちは!KOTOです。

〝文学的〟と評されるような堅苦しいものには縁がないのですが、穂村弘さんの選んだ短歌は大好き!

短歌って日常の中で感じる気持ちを凝縮して表現していて、その鋭さ、一文字も違ってはいけない繊細な世界に一瞬で飛び込める爽快感があります。

誰とも知らぬ人の人生の一場面に、一瞬感じたけど通り過ぎてしまったあの時の気持ちに、手のひらが触れたような感じがして。なんとも言えない快感を覚えてしまうんです 笑

穂村弘さんの『ぼくの短歌ノート』の魅力

 

今回は『ぼくの短歌ノート』という本の中から、個人的に好きだなと思う短歌を自分勝手に集めてみました。

この本は、「群像」という月刊文芸雑誌(講談社発行)で連載された「現代短歌ノート」をまとめたもの。穂村さんならではの視点で作られたテーマがそもそも面白いです。

賞味期限の歌ゼムクリップの歌身もふたもない歌落ちているものの歌デジタルな歌会社の人の歌・・・。目次を見ているだけでワクワクしてきます。

短歌の作り手には一般の女子中学生や社会人の方も多くて、だからこそ生々しく現代を表現していて、普段短歌なんか読まないよって人でも眠くならず 笑、「なんか分かるなぁ」ってなる気がする。

読者のバックグラウンドや年齢によってどの歌がピンとくるかは違いそうだし、穂村さんの解説も「はー、なるほど!そこに話が行き着くのね。そんな掘り下げ方があるのね。」とか面白いことしきりなので、ぜひ一冊まるまる読んでほしい一冊です📘✨

 

例えば、この短歌と、それに対する穂村さんの解説。

よくわからないけど二十回くらい使った紙コップを見たことがある       飯田有子

 

 昔は「紙コップ」なんてモノ自体が存在しなかった。だから、自然に「使い込まれた器」になれたのだ。だが、我々は「紙コップ」を開発した。使い込むよりも使い捨てを、修理よりも買い替えを優先する社会システムを採用した。生活のなかで周囲のモノを次々に使い捨て買い替えておいて、自分だけは使い込まれていい味が出たモノになれると思うのは虫が良すぎるだろう。

 ぼろぼろの紙コップ的老人になった自分が、未来の若者たちから「よくわからないけど」と遠巻きにされるところを想像してしまう。そんな直観が、私をこの歌に立ち止まらせたのだ。

(穂村さんの解説より抜粋)

 

こんな感じで解説がついているのですが、こんな風に「なんかいいなと思った」ということを言語化することにおいて穂村弘さんは天才的にうまいというか、やっぱり言葉の専門家さんなんだろうなぁと感じます。内に潜るだけじゃなくそれを言語化するって根気がいると思う。すごい。

 

この後は、独断と偏見で好きな歌を載せてみます。

老いをうたった短歌

 

 

四百円の焼鮭弁当この賞味期限の内に死ぬんだ父は             藤島秀憲

 

父のなかの小さき父が一人づつ行方不明になる深い秋            小島ゆかり

 

スカートはいて鰻を食べたいと施設の廊下に夢が貼られる          安西洋子

 

年中の孫が電話でおれと言う 俺の時より十年早い             山本 章

 

将来の夢はなあにと孫が聞く 脳内検索ヒット0件             山本 章

 

 

一つ目の短歌など、情景が思い浮かんでハッとします。誰もが違う人生を生きて違う場面に遭遇する。それは当たり前のことなんだけど、日常生活では忘れてしまいがち。個々人の生活があることを本や詩は思い出させてくれますね。

 

恋愛をうたった短歌

 

 

海視てもきみを想わず一握のゼムクリップにきみを想えり        大滝和子

 

二人してかたくつないで歩く手も離さねばならぬ別れる時は       中村清女

 

たくさんのおんなのひとがいるなかで

わたしをみつけてくれてありがとう                  今橋 愛

 

月を見つけて月いいよねと君が言う  ぼくはこっちだからじゃあまたね  永井 祐

 

最後だし「う」まできちんと発音するね ありがとう さようなら     ゆず

 

好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君     枡野浩一

 

間違って降りてしまった駅だから改札できみが待ってる気がする      鈴木美紀子

 

 

たった一行で切なくなってしまう歌ばかり。音楽や言葉によって恋愛の賞味期限を伸ばしてきたカップルはたくさん居るんだろうと思う 笑

 

女性がよむ身体的な短歌

 

 

年下も外国人も知らないでこのまま朽ちてゆくのか、からだ        岡崎裕美子

 

体などくれてやるから君の持つ愛と名の付く全てをよこせ         岡崎裕美子

 

したあとの朝日はだるい 自転車に撤去予告の赤紙は揺れ         岡崎裕美子

 

性交も飽きてしまった地球都市 したたるばかり朝日がのぼる       林あまり

 

やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君        与謝野晶子

 

脱がしかた不明な服を着るなってよく言われるよ私はパズル        古賀たかえ

 

一世紀前の与謝野晶子の時代に比して、現代では自身の命や身体を天からの授かりモノとみなすような感覚は希薄になっている筈だ。にも拘らず、ひとりの人間として主体的に生きられると信じて、そのように生きた結果、彼女たちの性的な身体感覚はモノ化したことになる。(中略)女性の身体感覚のモノ化とは、一方に現代の主体的な生の可能性があり、その一方で依然として男女の性的非対称性があるという、引き裂かれた現状と関わりがあるのではないか。

(穂村さんの解説より抜粋)

 

 

女性にとって身体をどう扱うか、っていうことは理性や倫理観とすごく関わりがあって、そこに矛盾が生じたりするとどうにもし切れない辛さや絶望感が襲ってくる気がする。

 

さいごに

KOTO
KOTO
このほかにも共感したりドキッとしたりヒヤヒヤしたりする素敵な短歌がぎっしり詰まっているので、ぜひよんでみてほしいです!

うさ
うさ
この本が好きな人には同著者の『短歌ください』もおすすめ!